2011年4月5日火曜日

フルブライト奨学金攻略法 (3)

(2)の続き

3.どうやって選考プロセスで戦うための力を手に入れるか

 (1).英語能力

 先述した通り、フルブライト奨学金に内定するためには英語能力が非常に重要である。しかも俺が言ったように、単純に「TOEFL~点以上」という意味での英語能力ではなく、もっと大きな意味での英語能力である。具体的には英語で書く能力英語で会話する能力である。

 英語で書く能力について

 フルブライト奨学金の選考プロセスにおいては、1次審査(予備審査)で作成する非常に短い研究計画書と奨学金趣旨と研究計画の合致についての説明文、2次審査で作成するパーソナルステートメントと予備審査より長い研究計画書を書くために「英語で書く能力」が求められる。
 まず当然の前提だが、TOEFLのライティングで用いられるような基本知識(段落の空け方や文章展開の基本形式)は、出願者は知っていなければならない。これが無いと話にならないが、前提の話(というか出願者のほとんどが当然持っているスキル)なのでこのブログでは説明を省く。
 問題は、「どんな内容の文章が求められ、それを書くためにどうすればよいか」ということである。これを考えるために役に立つのが、俺が先に触れた「1.自分の研究が該当分野や社会に与える影響、2.アメリカ留学が自分のキャリアにもたらす影響、3.アメリカ留学の(絶対的とも言えるまでの)必要性」の3本柱である。
 まず、「1.自分の研究が当該分野や社会に与える影響」について出願者は文章中で触れるべきである。この世界にはものすごく沢山の「問題」がある。そして、「問題」を解決するための思考と実験の繰り返しが「研究」である。フルブライト奨学金は、アメリカでこの意味での「研究」を行おうとする者を援助するために資金を提供するのだ。なので、当然資金をもらって「研究」を行うものは、そのための資金を提供する者に、自分の「研究」が対応する「問題」に対してどのような影響を与え、意義を持つのかを説明しなければならない。具体的に述べるべき要素を書き出してみると、

第1の柱

A. 「問題」に与える影響(the effect of the research on the topic)
B. 自分と同じような問題を「研究」する人々に与える影響(the effect of the research on the field)
C(A+B).自分の「研究」の社会的な価値(the value of the research)


の3点である。これら3点について言及することで、出願者は自分の「研究」が自分以外の人々や社会の発展に与える影響を述べるべきである。これはとりわけ研究計画書を書く際に気を払うべきことである。
 さらに、フルブライト奨学金は「将来のリーダー」となりうる人が、自分の資質を伸ばすためにアメリカで研鑽を積むことができるような援助を行うことを目的としているので、「2.アメリカ留学が自分(出願者)のキャリア(成長)にもたらす影響」について、説明しなければならない。具体的に言えば、

第2の柱

A.将来の自分の達成目標(なりたい自分)(my career goal)
B.Aのためにこれまで行ってきた努力と成果(my career development to date)
C.Aのために留学がもたらすと予測される影響(the effect of my study abroad on my career goal)

の3点である。これら3点について言及することで、出願者は自分のアメリカ留学が自分自身に与える影響を述べるべきである。これはとりわけパーソナルステートメントを書く際に気を払うべきことである。
 そしてこれらを書いた上で、さらに出願者がフルブライト奨学金に対して言明しなければならないことは、「3.アメリカ留学の(絶対的とも言えるまでの)必要性」である。実は上記2点は他の奨学金出願書類でも触れなければならない点だし、奨学金だけではなく研究資金を得るための文章の書き方の基本的な要素なので書くのは当たり前のことであるが、この第3の柱はフルブライト奨学金だからこそ強調すべき要素である。なぜなら、日本人に支給されるフルブライト奨学金は、留学先がアメリカ合衆国に限定されているからである。明白なことだが重要なので強調しておこう。
 したがって、出願者は、「イギリスじゃダメなんですか?アメリカじゃないとダメなんですか?」という質問に対して「絶対アメリカじゃないとダメに決まってんだろがこの野郎!!」と答えられるような理由を用意しておくべきである。実際、俺は2年前の面接で「アフリカでも君の研究はできるんじゃないのか」と聞かれたことがある。
 はっきり言って、本当のことを言えば「アメリカでしかできない研究」なんて非常に少ない。そんな研究だけで各分野まんべんなく採用することなんてかなり無理があるわけだから、ここで言う「アメリカ留学の必要性」を具体的に挙げると

第3の柱

A.なぜ自分の住んでいる国(日本)だとそれが難しいのか(why can't I do it in Japan)
B. (Aと関連して)アメリカで勉強することのメリットとは何か(what's my advantage in studying in the U.S.)
C(A+B).アメリカに留学することの(1と2の柱に対する)意義(the significance of my study in the U.S. on me)

の3点が主な触れるべき論点となる。「なぜアメリカなのか」という理由は、上記2つの柱をより強固にするためのものであり、これが有るものと無いものでは説得力の程度が変わってくる。フルブライト奨学金が「アメリカのみを留学先に強制する」という特質を持っている以上は、出願者はこの点に気を払うべきだ。
 これら3本の柱に沿って文章を作成することができればそこそこまっとうな研究計画書やパーソナルステートメントを書くことができるし、後の大学院出願書類作成の際にもこれらを書く技術は応用可能である。ここで述べたことはいわゆる一般的な意味での「ライティングのスキル」ではないが、フルブライト奨学金が求めているのは、そうした形式的な技術以上のより実質的な文章の中身である。そして、それを書くための努力というのは、ライティングの問題を解くのではなく、自分の将来について他人に説明可能な形で具体的に考えることだと思う。

思いの他長くなってしまったので(4)へ続く

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