2010年4月15日木曜日

ちびまる子ちゃんと「交通の教則」

 皆さんは「交通の教則」というものをご存知だろうか。運転免許取得に要する試験勉強や、免許更新の際に交通安全協会(という日本最大手の天下り組織)の方から渡されるあれである。内容は定型がほとんど決まっていて、大体前半部分に最新の道路交通法改正情報、後半部分に道路交通法や標識の意味などが記載されている。
 最近免許を更新した際に入手する機会があったのだが、今まで見過ごしていたが、引っかかったのは「交通の教則」のキャラクタータイアップとして、ちびまる子ちゃんが選ばれている事実である。なぜ自動車が物語中に全くと言っていいほど登場しないアニメを交通安全協会はタイアップに選んだのか?俺は講習の最中にそれを考察していた。考察の結果、もっとも合理性のある理由として、「アニメの中で登場するキャラクターが、老若男女平等に描写されていて、かつ国民的な認知度のあるアニメと言えば『サザエさん』か『ちびまる子ちゃん』しかない」という理由だ。ドラえもんではおばあちゃんやおじいちゃんといった道路交通法上の保護が手厚い客体が存在しないし、クレヨンしんちゃんは(ごく一部の物語の本質を理解できない)PTAからの風当たりが強い。こち亀だと日常的に登場するこういった「シルバー要員」は夏春都かぎりぎり大原部長ぐらいしか存在しないし、割合上述した意味での「風当たり」もきつそうだ。何よりもうレギュラー放送が終了している。
 このような理由から、交通安全協会(という日本再大手の天下り組織)のお偉い(と思い込んでいる)人々は、フジテレビ系列で現在も放映されていて、割合視聴率を取っている「サザエさん」と「ちびまる子ちゃん」をリストアップしたのだろう。それではなぜ「サザエさん」ではなく「ちびまる子ちゃん」にしたか?「ちびまる子ちゃん」にあって「サザエさん」に無いものは何か?俺の考察の結論から言うと、それは両物語の性質からする若年層のとっつき易さの違いである。サザエさんにおいてのほぼ常時に渡って登場するキャラクター、すなわち主人公は成人女性であるのに対し、さくら ももこは小学3年生であり、若年層が感情移入しやすいのは自分に年齢の近い後者のキャラクターであろう。交通規則上、さくら ももこと同じ年代の低年齢層もまた、高年齢層と同等の要保護性を有した客体であり、交通安全協会の戦略からすれば、彼らに親しみを持ってもらうことが必要とされたのだと考えられる。確かに、カツオやワカメが主体となる物語も「サザエさん」には沢山登場するものの、それらの話に等しく登場できる権限を有しているのは、主人公であるサザエさんに他ならない。子どもからすれば、成人女性が引き起こす家事上のバカよりも、同年代の女の子が学校生活上や友人関係上で引き起こすバカの方がとっつき易いのだ。
 このような理由から「交通の教則」のタイアップとしてちびまる子ちゃんが選ばれたと考えられるが、個人的に引っかかるのは、キャラクター性を無視した台詞の割り振りである。特にいらだたしいのは父ヒロシの台詞であり、物語中では最もろくでもないおやじのくせに、「交通の教則」では「安全な運転のためにしっかり講習を受けよう!」、「危険で、他人の迷惑になるような行為はダメだぞ」、「決められた速度を守ることは安全運転の基本だぞ」等の言葉を発しているのだ。「お前に言われたくねえよ」という声が聞こえてきそうである。丸尾君とかに言わせた方が良かったのではないか。それはそれでいじられそうであるが。
 

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