2013年11月1日金曜日

2013年国連YPPのLegal Affairs 用推薦図書に関する雑感

今年のLegal Affairs用の推薦図書(というか実際には図書じゃなくて国際法条文そのもの)に関する(8番目以外の)雑感が下記。

1.The Charter of the United Nations

高確率で持っている条約集の最初に入っていてなぜか日本のポケット六法にすら確実に入っている国連憲章。2条4項、2条7項、6章ちょっとと7章大部分(と純粋な法学的視点からはこれがないと国際秩序が始まらない103条)は覚えていて当然じゃないと困る。

2.The Convention on the Privileges and Immunities of the United Nations

国際法主体としての国連について規定した条約。国連の法人格と国連職員に与えられる特権免除に解する理解が必須。一般的に「国際機構」単独で講義を構成しない場合は教育機関だと「国際法の主体としての国際機関」の時間に教える。問題の作り手としてはケーススタディで絡めやすく、実際配布されているYPPの過去問でも(多分試験作成者がにやにやしながら)その手の事例を作っているので、国連損害賠償事件、国連経費事件についてのICJの勧告的意見は読んどくべき。

3.The Universal Declaration of Human Rights

いわゆるUDHR。「国際人権法」という講義があったら担当教官は高確率でICCPRやICESRの前に部分的でも触れる国連総会で採択された宣言。ここに示されている内容を100%守っている夢のような国は世界中どこにも存在しないことは自明だが、それでも国際人権法の(象徴的な意味も含めて)最上位の法源には違いが無いので、国際人権法上の問題に関して論文を書く場合は法源っぽく言及するのが常套手段。

4.The Geneva Convention of 1949

いわゆる「ジュネーブ諸条約」でこっちは「国際人道法」の最上位の法源の1つ。国際人道法兄弟のもう一方の片割れである「ハーグ陸戦条約(ハーグ法)」が戦争の「方法」を規律することを重視するのに対し、こっちのジュネーブ法は戦争の「対象」を規律することを重視する。特に現代的な文脈では「戦時」と「平時」、「戦闘員」と「非戦闘員」の境界が曖昧になっていることもあり、4つ目の文民の保護に対する条約が大切。ロースクールだと教員は「戦闘員」と「非戦闘員」の現代的な区別に関する終わりのない議論で法の不確定性をアピールして無理して盛り上げようとする。

5.The 1982 United Nations Convention on the Law of the Sea

国際海洋法の最上位の法源。所謂「排他的経済水域」とか「領海」とかいう言葉の意味はこの条約を見ればわかる。日本は海洋国であることもありマニアがいっぱい居る。これも事例問題にしやすい。

6.The annual resolutions of the United Nations General Assembly on Oceans and the aw of the sea

上記の海洋法上の問題に関する国連総会決議(の数々)。今回のような試験でまともに相手にすると「実際は6問中1問しか出なくてしかも他の3つの方が簡単で選ばなかった・・・」という展開になるのが怖い。もっとも筆記試験の次の面接で面接官が国際海洋法マニアで「君は国際海洋法の問題は解かなかったが云々」みたいな展開になるともっと怖い。

7.The 1969 Vienna Convention on the Law of Treaties

いわゆる「ウィーン条約法条約」で、通りを歩いているおっさんおばさんは(国連憲章に比較して)まず知らないが何気に国連憲章と並ぶくらい国際法にとって大切かもしれない。特に「条約の留保」については、これに関する問題で世界中の国際法学者達が期末試験で学生達を苦しめようと舌なめずりしている。

0 件のコメント:

コメントを投稿